当会の歩み

岩手県歯科医師会の歩み

本会は、2017年(平成29年)5月1日をもって、
おかげさまで創立100周年を迎えました。

創立100周年記念  特別対談
株式会社岩手日報社 代表取締役社長 東根 千万億氏
株式会社岩手日報社
代表取締役社長 東根 千万億
代表取締役社長
東根 千万億
(あずまねちまお)
一般社団法人岩手県歯科医師会 会 長  佐藤 保氏
一般社団法人
岩手県歯科医師会
会 長  佐藤 保
会 長
佐藤 保
(さとうたもつ)

県民に寄り添い、生活を支える歯科医療を推進してきた岩手県歯科医師会が2017年5月20日に100周年を迎える。同会の佐藤保(さとうたもつ)会長に、100年の歩みや今後の展望、県民への思いなどを聞いた。

(聞き手は岩手日報社・東根千万億(あずまねちまお)社長)

東根岩手県歯科医師会100周年おめでとうございます。万病の元は口腔(こう くう)にありと言われますね。むし歯や歯周病、歯の喪失に伴う健康課題を、どのように啓発するお考えですか。

佐藤むし歯や歯周病、歯の喪失は100年前から変わらず、歯科医師の大きな仕事です。中心課題にあるのはいつも、むし歯をなくそう、歯周病を防ごう、歯が無くなったらきちんとした入れ歯を作り、何でもかめるようにしよう、という変わらない問題です。

しかし、100年の月日の間に変わったこともあります。むし歯の子どもは少なくなりました。歯周病について詳しい人も増え、意識の変化を感じます。県歯科医師会には、むし歯や歯周病などを減らす努力をしてきた歴史があり、今までもこれからも、その点が啓発していく上での柱です。

東根一方で、新しい課題も出てきているでしょう。がんと診断された場合、歯科の受診を勧められるという話を聞きました。肩こり、かみ合わせとの因果関係、食事の上での咀嚼(そ しゃく)の重要性なども指摘されているようですね。

佐藤頭頸部(とう けい ぶ)がん(首まわりのがん)の場合、口腔内をきれいにしているか、していないかで、病気の進行や入院日数が変わります。また、頭頸部以外のがんであっても、手術で全身麻酔をする際に口から気管へ管を挿入しますので、口腔内をきれいに保つことは大切ですし、手術後の誤嚥性(ご えん せい)肺炎を防ぐことにもつながります。がんになった時には、より早く治すこと、より高い質で治すことが求められます。その中で、実は歯科も大切なのです。手術を受ける前に、お口の中をきれいにしてください。それが「口腔ケア」です。口腔内をきれいにすることは歯学のみならず、医学にも密接な関わりがあるという気付きが、やがて科学的な根拠をもち、今では「口腔ケア」という言葉が浸透してきたように感じます。

東根下あごの部分には動脈があり、口腔内の菌はその動脈を通り、全身に回ってしまうそうですね。歯科医師にとっては当然の知識でしょうが、一般の人たちはどの程度歯科の重要性を知っているのでしょうか。

佐藤手に切り傷ができたとき、手が汚ければそこから菌が入ることは誰もがわかっていることです。歯磨きをして血が出たときも、同じように口腔内のばい菌が入ってしまいます。歯周病は歯ぐきから出血することはよく知られていますが、それは菌などが血管の中に入るということでもあります。口腔内の菌は、へばりつきます。歯にへばりついてむし歯を起こし、歯ぐきにへばりついて歯周病を起こす。そのような菌が血管にへばりつけば、血管が狭くなり血圧が上がるなど、血管の病気と深く関連します。

東根人は見た目が9割などとも言いますが、歯並びも相手に与える印象に大きく関わると思います。幼い段階で歯科矯正を選択する人も多いのではありませんか。

佐藤昔から、美人を表す言葉として「明眸皓歯(めい ぼう こう し)」と言うくらいなので、きれいな歯は見た目には重要な条件なのでしょう。歯並びが良いと、口元がきれいなだけでなく発育にも良い影響を与えます。

しかし、歯科矯正などの医療や治療が関わる場合は、本人の治したいという気持ちと、家族で取り組もうという姿勢が大切です。健康志向は家族をつなぎ、皆で考える良い機会を与えてくれます。

東根アメリカなどでは歯科と健康維持との関連を小学校で学ぶようです。日本の教育現場では、歯科の健康の大切さが伝え切れていないように感じます。

佐藤歴史的背景の違いが関係しているのかもしれません。日本は明治維新以来、ドイツから医学を導入しました。その中には残念ながら歯科医学という分野はありませんでした。歯科医学は国策ではなく、私学として渡米した人が学び、日本に持ってきました。

しかし、どの国でも小中学生の教育が大切であることに変わりはありません。その時期に、頭のてっぺんから足の先までさまざまな健康課題を考えることができるよう、教育することが大事です。その点ではまだ課題があると思います。