東根 千万億氏、佐藤 保氏ツーショット

また、2016年希望郷いわて国体において、71回の国民体育大会の歴史の中で初めて歯科医師の職種が要項に記載され、スポーツ歯科医学の重要性が認識されてきています。実際には、延べ71名のスポーツデンティストが競技場の救護所に配置されて支援したり、事前にスポーツ用マウスガードの作製をして、国体運営や競技活動の支援をしました。

東根歯科医院は歯が痛くなってから行く所ではなくなっている面があります。歯石の除去など普段からの定期的な口腔ケアも必要な気がします。独自に検診などに取り組み始めている企業もあると聞き、巡り巡って医療費の抑制にもつながると思いますが、いかがですか。

佐藤痛くなってからの「治療」と、痛くなる前の「予防」があり、治療は快適ではありません。時間はかかる、つらい思いをする、お金も多くかかる。早い段階の予防が良いことは、皆がわかっています。ではなぜ予防が進まないかと言えば、健康に対する価値観の違いがあるからです。我々はもっと予防の必要性を伝えていくべきでしょう。

企業が定期的にフォローするという取り組みは効果的です。社員の健康に関わる取り組みをしている事業所は医療費が低いというデータも出ています。歯科医療費だけで考えても、間違いなく快適な状態を続けている方は医療費がかかりません。

東根私は月に一度、歯科検診を受けています。その中で、歯科衛生士など、歯科医師以外の歯科専門職の役割も大きいように感じます。

佐藤口腔ケアに対する歯科衛生士への評価はもっと高くても良いと思います。また、もう一つの重要な存在である歯科技工士なくして、歯科医師の治療は完成しません。さまざまな仕事を行う人がチームプレーで動いているのが歯科医療です。

東根東日本大震災から6年が経ちました。災害時に歯科医師らの活躍がありましたが、今後起こるであろう災害に対し、県歯科医師会としてはどのように経験を生かしていきますか。

佐藤必要なものは災害状況によって異なります。阪神淡路大震災や新潟県中越地震を経験した歯科医師と話しても、一つ一つ対応は異なっていました。

災害時に歯科医師が行うべきことは主に三つあります。一つめは身元確認。歯型や治療痕を手掛かりに、亡くなった方の身元を明らかにし、家族の元へ戻れるようにします。二つめは、避難所支援です。助かった命が避難所で失われることを防ぎます。口腔ケアが行き届かないと、誤嚥性肺炎につながります。阪神淡路大震災の時にはそれが原因で亡くなった方が多く、新潟県中越地震では反省が生かされました。三つめは、被災地の歯科医療の回復です。東日本大震災は午後2時46分でしたが、阪神淡路大震災は朝6時前の発生で、多くの人が入れ歯を持たずに避難しました。入れ歯がないと食べられない。食べられないと健康を維持できません。災害が起こったその場所で、いかに地域医療を確保するかが大切になります。

東根団塊の世代の歯科医師が一線を退くと、将来的に歯科医師不足の時代が到来するように思います。超高齢社会が進みますと、ますます歯科医師の力が必要になると考えますが、いかがですか。

佐藤現行では歯科医師はほぼ足りていますが、将来的には不足する。私も同じように考えています。高齢化のスピードは想像以上に早いものです。歯科医師の世界も日本の人口動態の変化と同じような推移をしています。地域歯科医療を確保するため、人口動態や施策、経済や行政、県民の意識などのそばに常にいるというスタンスがまず必要です。

さまざまな環境に対応できる歯科医師を育てていくことが我々の使命。数と質を高め、地域と一緒に歩む歯科医師でありたいと思っています。

東根ありがとうございます。最後に岩手県民の皆さまへメッセージをお願いします。

佐藤昨年度は46年ぶりに国体を経験し、大変な感動を味わいました。岩手県歯科医師会は100年を迎えますが、国体を考えると、50年の歴史とは長いものではない気がします。そういう意味では、私たちは「ごくごく身近な次の100年」に目を向けなくてはいけません。「岩手で生きる歯科医師は、100年後も岩手と共に」そうありたいと思っています。

(企画制作/岩手日報社広告事業局)

佐藤保 氏(岩手県歯科医師会 会長) 1980年岩手医科大学歯学部卒業。岩手歯科技工専門学校非常勤講師等を勤め、1989年に佐藤たもつ歯科医院開設。2015年から岩手県歯科医師会会長、翌16年には日本歯科医師会副会長に就任し、歯科・口腔を通じた健康づくりに尽力している。