認知症と歯科

認知症は、十分に脳が成長した後に、何らかの原因で病的な慢性の知能低下(記憶、見当識、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力)が起き、6カ月以上にわたり社会生活や日常生活に支障をきたすようになった状態を指します。

超高齢化社会を迎え認知症患者は増加の一途をたどっており、厚生労働省の推計では、65歳以上の認知症患者は2025年には700万人を超え、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。

認知症になると、

  • ●口の健康悪化
    口腔衛生に関する意識が低下しはじめ、むし歯や歯周病に罹患し、進行していきます。
  • ●全身への影響
    口腔衛生悪化により、口腔内の細菌が増殖し、誤嚥による呼吸器感染(誤嚥性肺炎)をおこしやすくなるほか、全身疾患のリスクが高まります。
  • ●噛む能力の減退
    よく噛めなくなることで、脳への刺激が減少し、さらに症状が進行する。

歯科の役割

  • ○健常時から口腔健康管理することで、予防(認知症発症遅延)への一助となること、また些細な変化から認知症が疑われるとき、早期にかかりつけ医へ送ることができる。
  • ○発症してからも、口腔清掃をし、口腔機能を維持することで、認知症進行を緩やかにする。
  • ○進行した場合でも、できるだけ口腔内の清潔を保ち、少しでも快適な生活を送ってもらう手助けをする。

認知症発症にはいくつかのタイプがありますが、最も多いとされるのが「アルツハイマー型認知症」です。これは、脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積されることで発症します。最近の研究で、歯周病菌がアミロイドβの生成、蓄積を促進させることがわかりました。日頃から定期的歯科健診を受け、口腔衛生を保ち、お口の機能を維持することが認知症予防、いわゆる認知症の発症を遅らせたり、進行を緩やかにしたりすることにつながるのです。

ちなみに、認知症と糖尿病は相関関係があるといわれていますが、歯周病と一部の認知症の関係も明らかになり、相互に強い相関がある歯周病と糖尿病と併せて三つ巴の関係であり、医科、歯科が連携して取り組んでいくことがより有効です。