警察歯科活動

平成26年8月29、30日
「平成26年度県総合防災訓練」

8月29、30日の二日間、岩手山周辺の八幡平、滝沢、雫石3市町村で火山噴火を想定した岩手県では初の防災訓練が行われた。訓練は98機関、約6千人が参加し、岩手山の噴火と大雨による土石流発生を想定し、適切な避難やそれぞれの役割など、広域災害への対応を確認するものであった。警察歯科は30日に八幡平市の松尾多目的屋内運動場「アリーナまつお」で行われた遺体処置訓練に参加した。訓練には八幡平市職員、岩手県警察本部、岩手検案医会、岩手医科大学法医学講座とともに岩手県歯科医師会から警察歯科委員会および岩手八幡平歯科医師会の先生方が参加した。
訓練は警察による設置作業に続き、被害想定の確認、時系列確認そしてホワイトボードに記された活動部隊一覧表の確認後、9時30分過ぎより遺体搬入開始、全身火傷で死亡したご遺体を想定したマネキンの搬入後、医師による検案作業に続き歯科医師による身元確認作業が開始された。確認作業では作業衣を身にまとった岩手八幡平歯科医師会の田中 稔夫先生、岡田喜明先生および土樋博志先生が身元確認作業歯科医師として訓練を行った。黙祷にはじまり、顔貌写真、口腔内写真の撮影を行い、ダブルチェックでの死後記録採取を行った。歯式の統一した記録方法を確認しながら模擬レントゲン撮影も行い1人目の身元確認作業を終了した。2人目の確認作業では岩手県知事の視察と重なり当日一番の緊張感の中、冷静に作業を進められた。その後用意された生前記録との照合作業を行い、予定していた一連の作業を終了した。これまで同様の訓練を行ってきて準備万端と思うも、いざ当日になると細かな問題点も確認でき訓練は継続するものと改めて感じるところであった。

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岩手山噴火 遺体処理訓練
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被災者ヘリ搬送 知事視察

 

平成26年9月16、17日

「平成26年度東北管区広域緊急援助隊総合訓練」

9月16日(火)、17日(水)の二日間、矢巾町の岩手医科大学附属病院移転予定地及び同大矢巾キャンパス内施設にて、東北管区警察局と岩手県警察本部の共催により警察災害警備部隊等の災害対処能力向上を目的とした訓練が開催された。
訓練には警察部隊から、東北管区広域緊急援助隊(警備部隊、交通部隊、刑事部隊)、緊急災害警備隊、広域警察航空隊、機動警察通信隊。関係機関から陸上自衛隊、盛岡地区広域消防組合消防本部、岩手医大DMAT、岩手県立中部病院DMAT、岩手県歯科医師会、岩手検案医会が参加した。また上記以外に、千葉大学法医学教室から本村医師、千葉医師、新潟大学法医学教室から葛城歯科医師、秋田大学法医学教室から大島医師、大谷歯科医師、秋田県歯科医師会から佐藤常務が参加した。訓練は負傷者の救出救助、遺体処理、交通規制、災害現場映像伝送等について、ブラインド型(参加者に想定等を事前に知らせない方法)で実施された。
県歯警察歯科委員会が携わる遺体処置訓練については、8月末に開催された岩手県総合防災訓練同様に医師、歯科医師受付にて名刺の提出をもって受付をすませ、身元確認をするための作業場所の設営、器材の搬入と配置から始まった。次いで全体ミーティングをして、さらに職種ごとに別れてミーティングをして訓練開始に備えた。訓練は実際の流れを順守し、「検視(検視官)」⇒「検案(医師)」⇒「歯科所見採取(歯科医師)」のながれで模擬遺体を使って行われた。
今回の訓練では岩手医大出羽教授の提案により、訓練中に施設内を「暗闇状態」にして、自分たちの用意した光源でどこまで作業に対応できるかという初の試みもなされた。結果、用意したヘッドライトやハンドライトなどの補助光源で十分に作業できることを確認できた。訓練中に警察庁米田長官や達曽県知事らが視察に訪れる場面があり、SPに囲まれた警察庁長官のお出ましに参加者は緊張気味の作業となった。

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野営訓練 ドクターヘリ
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米田警察庁長官視察

 

平成26年11月15日

「平成26年度法歯学セミナー並びに第9回身元確認作業の合同研修会」

10年前より岩手県警察本部と岩手県歯科医師会で行っている合同研修会が、今年も11月15日(土)に岩手県歯科医師会館5階8020大ホールにて行われた。
今年は研修会始まって以来、初めて岩手県警察本部の田中俊恵警察本部長が来賓としてお越し下さり、また今年度の警察歯科医会全国大会が行われた、徳島県歯科医師会常務理事で大会実行委員長の早雲講二先生、釜石海上保安部16名にも参加いただいた。
狩野敦史理事の司会で開会し、初めに箱崎守男岩手県歯科医師会会長と田中俊恵岩手県警察本部長に挨拶をいただいた。田中本部長は、いつ起こるか分からない自然災害への備えが必要な事、また、県警と県歯のより密接な関係が必要であると話された。
法歯学セミナーは、昨年も講演いただいた日本歯科大学生命学部歯科法医学講座の都築民幸教授と岩原香織講師に「歯科医師が行う災害医療」について講演いただいた。
災害の種類や被災状況に応じた適切な活動が必要であり、かつ、災害医療と救急医療が根本的に違うものであるという事を話された。また歯学部における講義に、災害医療や身元確認作業の講義が必要である事も話された。
続いて合同研修会では、早雲講二徳島県歯科医師会常務理事より、「災害における徳島県歯科医師会の取り組みについて」お話をいただき、次に齊藤雅人常任委員が県警の初任の方々や釜石海上保安部の方々へ向けた、口腔内に関する基本的な知識や身元確認作業の必要性等について「歯科所見における身元確認作業について」という講義を行った。
実習では身元確認作業の一連の流れ(顔、口腔内写真とX線写真を撮影し、ご遺体ごとにCDにまとめて鑑識課に提出)と焼損遺体等における対応や遺体の開口訓練、口腔内写真やレントゲン写真の撮影法について行った。
最後に、岩手県警察本部の吉田良夫鑑識課長と岩手県歯科医師会、牛袋徳道常務理事より総評をいただき合同研修会を終了した。
徐々にではあるが、合同研修会の重要性が認知され、輪が広がってきており、「継続は力なり」と感じる研修会であった。参加者の皆様、お疲れ様でした。

 


 

社会的な負担に答える警察歯科活動

歯科医師が行う行為は一般的に歯科保健医療活動が主なものです。歯科医療は日々専門分野が多様化し、その進歩には目覚ましいものがあります。一方で歯科医師には、歯科保健医療活動とはまったく異なる社会的な負託があります。歯科的な専門知識を用いてさまざまな警察業務に協力するという社会的な役割です。警察歯科活動と呼ばれていますが、この活動は歯科医師の信義に某づいたもので、過去において先人達が多大な労力と英知を重ね、大規模災害・事故等に際しては多くの身元不明死体の個人識別を行ってきています。そしてこの活動が近年、社会に認知され評価されてきています。しかし社会の二一ズにこたえるためには、警察歯科医としての研鑽を積まなければなりません。そして警察歯科医は選ばれた者だけのものではなく、歯科医師であればだれでも応えることができるように準備しておくべきことです。それらの情報提供や、研修の機会を設けることを担うのが警察歯科委員会の役割と考えています。

(1)現状

①大規模事故・災害を想定した多数死体の検屍・身元確認作業の実地訓練

我が国においては今後も大規模な白然災害の発生する可能性について専門家は語っています。大規模災害・事故において大量死体が発生した場合、過去の例からも多くの歯科医師がその身元確認作業に携わり、多くの遺体の身元を判明させた報告があります。このような大規模事故・災害時の対応は瞬時に行うことはできません。あらかじめそのような事態を想定した実地訓練を警察当局と合同で繰り返し行うことにより可能となるものと思われます。

②会員対象とした法歯学的セミナーの開催

社会が歯科医師に求めている専門性の一つに歯科学的専門知識を用いた身元不明死体の個体識別があります。会員は入会と同時に歯科医師として「警察協力歯科医」という役割を担わなければなりません。個体識別の精度を高めるためにも、会員個々の法歯科学的見識を高め、より専門性を高めるためにもセミナーによる学習を進めたいと考えています。

③所轄警察署における個々の事例に関する個体識別の協力体制の確立

地域社会における歯科医師の役割として種々のことがあげられます。所轄署における個々の事例の身元不明死体における検屍・身元確認作業は日々の警察業務に対する協力として社会的に高く評価されています。

④警察歯科業務をさらに充実させるために警察歯科委員会の全国セミナー等への参加

⑤警察本部との緊密な連携の確立

(2)将来展望

大規模事故・災害時の歯科医学的役割は大きく2つに分けられます。

①被災者に対する歯科医療救援活動

歯科医療救援活動はさらに被災直後の緊急歯科医療活動と、被災後の避難所における避難民の歯科救援活動とがあります。(平成20年6月発生した岩手・宮城内陸地震においては地区歯科医師会が避難所における避難民に対して迅速な歯科衛生材料の配布、口腔ケア、歯科保健衛生指導等を行ったと報告されています。)緊急歯科医療は被災者の機動的救出として以下のことが行われなければなりません。

1)災害現場での歯科医療

2)臨時救護所での歯科医療

3)後方病院歯科への緊急収容

このような緊急歯科医療に関しては歯科医師会はもとより歯科口腔外科を持つ岩手医科大学歯学部との連携は不可欠となります。また、避難所における歯科救援活動は被災者の健康・QOLの観点から「生きる力を支援する、生活を支援する医療」として非常に重要です。そしてこの歯科救援活動こそ歯科医療関係者(歯科衛生十会、歯科技工十会、大学病院歯学部、行政関係者)の協力を得、我々歯科医師会が医療を担う一員として最も果たさなければならない役割なのです。

②多数死体の身元確認作業

大規模事故・災害時には不幸にして多数の犠牲者が発生します。その中には身元を確認できない遺体も発生することが多々あるのです。警察当局から歯科医師会に依頼されることにより対策本部が立ちあげられ、警察歯科委員会を中心に「大規模事故・災害発生時の多数死体の身元確認作業」が行われます。歯科医学的見地により警察当局と協力しながら身元不明死体の個体識別作業を行わなければなりません。(これらのことを想定し、現在警察当局と合同研修会を毎年開催しています)大規模事故・災害は全く予期しないときに発生するものです。平成7年に、未曽有の犠牲者を生じた「阪神・淡路大震災」を体験した兵庫県歯科医師会は後日震災時の自らの活動を振り返り「大震災と歯科医療」という小冊子にて報告と提言を行っています。現在岩手県歯科医師会においては「大規模事故・災害時における被災者に対する歯科医療救援活動」の体制が十分に整っているとはいえず、このことは今後喫緊に検討しなければなりません。